初恋ディジー
「……人の気も知らないでさぁ……」
照れていたかと思えば、
今度はオモチャを取り上げられた子供みたいに拗ねる。
――可愛い、
そう胸がキュンと高鳴ったことがバレませんように。
『――次は××、××です。降り口は右側になります』
社内アナウンスが再び流れてしばらくして、次第に他の路線の駅のホームが視界に写り込んだ。
『××、××です』
私達の立っている反対側のドアが開き、乗客たちが降りる。
榛名くんが言っていたとおり、この駅では乗り換えする人がほとんどで、
電車は一気に空いて満員だったのが嘘みたいだ。
「空いたね」
とドアから手を離して体制を直す榛名くん。
ガッチリ彼の両腕に囲まれていた私にも、ようやく自由が戻った。