初恋ディジー
「席空いたから座りなよ」
「榛名くんは?」
「一つしか空いてないのに男の俺が座ったら、どんだけ気が利かないのって感じじゃん?
いいから佐脇さんが座って」
「うん、ありがとう」
お礼を言ってすぐ側の端側の座席に腰掛けると、榛名くんは私の目の前の吊革に手を伸ばした。
――あ、そうだ。
「あのっ、榛名くん?」
「ん?何?」
「“人の気も知らないで”ってどういう意味?」
さっきはあまりにも緊張しすぎて触れなかったけど、今になって気になり出す。
「……そんなことも分からないの?」
榛名くんは真上から私を見下ろしながらそう言った。