初恋ディジー

「いくら足の速いさくらでも勝てるわけないじゃん。だってあの子、中学の陸上大会で毎年短距離優勝してたんだもん」


「まさか、希沙。それを知っててジュースを賭けたの?!」


赤く光ったボタンを押してそう言った希沙ちゃんに、さくらちゃんは目を丸くする。


「だって別に聞かれなかったし、さくらも気合入ってたから面白いと思って。 ……それにしてもやっぱり速かったわ」

と缶を開け、喉を鳴らして希沙ちゃんは美味しそうにそれを飲んだ。


「やけに自信たっぷりな顔してたと思ったら、そういうことだったのか!」


「ご馳走様」


ふふっと満足気に空になった缶を捨てると、希沙ちゃんは結んでいたハチマキを一度首まで下ろした。
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