初恋ディジー
「ちょっと麻有ってば!聞こえてんでしょ?」
希沙ちゃんが肩を揺らしてくる。
ふと斜め前に並んでいた由香里ちゃんと目が合う。
「――ッ!」
“勝った”
そんな顔でニヤリと笑う彼女から、私は視線を逸らした。
「負けちゃったんだね……焼き肉楽しみだったのに」
不審に思われないようにそう言うと、希沙ちゃんが“何だ、そんなこと”と手を離した。
「そんなに食べたかったの?」
「麻有が焼き肉なんて似合わないけど」
二人が笑う。
そんな二人の言葉が、遠くに感じた。