初恋ディジー


「……え?」


用を済ませて立ち去ろうとした私の背中に向かって、榛名くんはそう聞いてきた。


立ち止まって振り返る。


「聞いてたんでしょ?さっきの告白」


私達が居たことに、どうやら気付いていたみたいだ。


「ご、ごめんなさいっ!」


頭を深々下げて彼に謝る。


「別に聞かれて困るようなことじゃないから、謝らなくてもいいよ」


そう言われて顔をあげると、榛名くんは傍の壁に寄り掛かりながら足元にあった石を蹴飛ばす。


「冷たい態度を取れば“冷たい”、優しくすれば“優しすぎる”って……。じゃあ、どうすればいいんだよ。本当女の子の扱いって難しいわ」


髪をクシャッと握り、榛名くんはまた深い溜息をついた。

< 29 / 393 >

この作品をシェア

pagetop