初恋ディジー

「……何?」


振り返ることなく、立ち止まった榛名くん。


「大事な話があるの」


そう口を開くと、ようやくこちらを向いた。


「……彼氏が出来た、とか言うなら聞かないよ」


「違うっ!彼氏なんて出来てない」


「――じゃあ、何?」


「あの、ね」


何となく険しい榛名くんの表情を見て、振られる覚悟はしてきたはずなのに、いざとなると声が震えてしまう。


だけど今日はすべて伝えるって決めたんだもの。


「……これ、夏休み前にあけたの」


そう言って、右の髪をすくい上げた。
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