初恋ディジー

離れていても


「佐脇さん、何からやりたい?」


花火の袋を開けて蝋燭に火を付けながら、榛名くんは声を掛ける。


「好きなの選んで」


「えっと……じゃあ、コレ……」


地面に広げられた花火の一つを手に取り、その先端を蝋燭へと近づけると“ジュー”と音を立てて火が点いた。


「火の近くを持つと危ないよ」


そう言われ、少し手の位置をずらす。


「じゃあ、俺はコレにしよう」

と束ねた花火を一気に点けた。


グルグルと円を描くように回しながら、花火を楽しむ榛名くん。


私は火を見つめたまま、何も喋らなかった。
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