心はいつも、貴方とともに
実はジークも同意見だったが、わざわざここで言う必要はない。



ピンで飾りを固定した二人の後ろを、王子であるランバートが通っていった。



それに気づいたジークは冷や汗を拭う。



あと少しタイミングがずれていたら、確実に聞かれていただろう。



騎士団の司令であるランバートは、簡単に二人を除隊できる。



それを考えると眩暈がした。



「見ろよ、ランバート様だ。」



ジークの心労を知りもしないラジャが、ランバートに顔を輝かせる。



「相変わらず凛々しいなぁ。
あんなにカッコいい人が次期国王だなんて、俺、胸が高鳴るぜ。」


「おい!
次期国王になられる方になんてことを。」


「え、褒めてるんだけど。」


「…。
もういい。」



決して悪い奴ではないんだが、とジークは内心ため息をつく。



良くも悪くも素直なラジャは、うっかりと口を滑らせる。



さっきの言葉も、現国王を否定しかねない。



ジークは大きく深呼吸すると、準備を再開した。



「なぁ、ジーク。」


「なんだ?」


「今さらなんだけど、俺、今晩なにを着ていこう。」


「……俺も考えていなかった。」



大変だ。



ジークは顔が青ざめていくのを感じた。



< 15 / 193 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop