心はいつも、貴方とともに
この街は、昔からこんなだっただろうか。
道行く人々も、通りの両端にある店屋も、大道芸人も。
みんな不思議な雰囲気をまとっているように見える。
アミリアと手をつないで、夕焼けの下町を何をするでもなく歩きながら、ジークは見知らぬ街に来たかのような感覚に襲われていた。
人と歩くと、こういう気持ちになるのだろうか。
隣のアミリアとは、実家を出てから、ほとんど会話は交わしていない。
朝に互いの過去について少々語らったくらいだ。
それでもつないだ手、横顔からなんとなく彼女の感情が読み取れた。
だいぶ景色になれたのか、すっかり落ち着いて挙動不審な行動をとらないでいる。
帽子のつばの下からは、好奇心旺盛な目がきょろきょろと覗いてはいるが。
「こっち。」
くんっと、手をひっぱると不思議そうに見返してくる。
ジークが声を発したのが嬉しかったのか、伏せた顔は笑顔だった。
「どこへ行くの?」
沈黙が破れたからか、アミリアも饒舌になった。
答えようと口を開いて、ジークは言葉を変えた。
「恋人たちにふさわしい場所。」
半歩後ろで、アミリアが繰り返すのが聞こえた。
そうだ、恋人だ。