心はいつも、貴方とともに
するりと腕を絡ませてきたアミリアを抱きしめる。



「大胆だな、王女様。」



茶化すと、帰ってきた声は真剣だった。



「だって、今だけだから。」



その声は寂しげだった。



それを聞いて、目を背けようとしていた現実に引き戻される。



金の柔らかい髪に顔を埋め、ジークは目を閉じた。



そうだ。



城に帰れば、好きな時に彼女をこうして抱くことはできない、触れることさえ許されない。



今だけだ、思うだけ一緒にいられるのは。



夕焼けに照らされながら、何をするでもなく、抱き合っていた。



ざわざわと、表通りでは人が行きかっている。



その中で、自分たちはなんて切ないんだろうと思った。



こんなに愛しているのに、結ばれはしない。



今だけだ。



今回の外出だって、ランバートがくれた、最初で最後のプレゼントだ。



戦争が激化する前にと、最後の思い出にと、時間をくれた。



「ねぇ、ジーク?」



静かに、アミリアが沈黙を破った。



「私、時々思うの。
こんなに幸せなのは、一生分の幸せを凝縮したからじゃないかしら。」



気のせいか、彼女は涙声だ。



しかし、その声は落ち着いている。




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