心はいつも、貴方とともに
「ねぇ、マリア。
私、いつも思うの。
どうしてあの時、求婚を受けなかったのかって。」



うわ言のように、今日もアミリアは独白を始める。



「あそこで道を違えたのね。
私さえあそこで失態をおかさなかったら、この国は平和なままだったのに。」



マリアは苦しそうに顔を歪めた。



お願いですから、そんなことはおっしゃらないでください。



そう言っても効果はないのはわかりきっているので、そんな野暮なことは口にしない。



ただ、聞いているのは、つらかった。



コンコンと、扉がノックされ、若い侍女が入ってきた。



マリアを見るとピンと背筋を伸ばし、恐れおののきながら、耳元で口を開く。



「ジーク様が戻られました。」



その伝言を受け取ったマリアは、ほっとした顔でアミリアに駆け寄った。



「アミリア様、ジーク殿が戻られましたよ。」



それを聞いて、アミリアは弾かれたように立ち上がった。



駆けださんばかりのアミリアを押しとどめ、マリアは慌てて耳元で囁いた。



「若い侍女にお二人の関係が知れればすぐさま城中に広がり、離れざるをえませんよ!」



それを聞きとどめるだけの理性はまだなんとか残っていたアミリアは、黙ってソファに腰かけた。



ドキドキと胸がはちきれそうだ。



どんな姿で帰って来るのか。



包帯など、巻いていないといいけれど…。



記憶にあるジークを想像し、部屋に入ってくるのを待ち構える。




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