心はいつも、貴方とともに
しばらく二人とも無言だった。



突然ぱっと身体を離したジークは、さっきと変わって笑顔だった。



「さぁ、土産話でもしようか。」



毎度毎度、ジークは城を出るたび新しい話を持ち帰っては聞かせてくれる。



城を出たのは、あの時以来のアミリアを気遣ってのことだろう。



お話よりも、その心遣いが嬉しい。



「またあるの。」


「嫌か?」


「ううん、そうじゃなくて。
街には面白いことがたくさんあるのね。」


「そういうのではないよ。
ミアにとっては珍しいだけさ。」



ジークは少しだけ顔を顰めて笑った。



「俺にとっては、城の方が興味深いもんな。」


「そうなの?」



それはきっとアミリアにはわからないことなのだろう。



頷いたジークにこれ以上質問するのはやめた。



「もう一度、二人で城を抜け出してみたい。」


「…戦争が終わったらな。」



ジークが優しくアミリアの髪を撫でる。



「平和が戻ったら、ランバート様に掛け合ってみよう。
一日くらいなら、許していただけるかもしれない。」



ひょっとすると、外泊許可も出るかもな。とジークは屈託なく笑う。



でも、アミリアにはわかっていた。



そんな幸せな日が、訪れることはきっとないと、わかっていた。




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