心はいつも、貴方とともに
ジークにもわかっていたのだろう。



言葉とは裏腹に、彼の顔は寂しげだった。



また沈黙。



最近、沈黙が多くなってきた気がする。



何をするでもなく、見つめ合う時間が増えた。



そうして決まってそういう時、ジークはとても辛そうな顔をするのだ。



もしかしたら自分もそうなのかもしれない。



アミリアはそっとジークを抱きしめた。



「ねぇ、もし外に出られるとしたら、どこへ連れて行ってくれる?」


「そうだなぁ。」



耳元で、ジークが呟く声がする。



「まず、あの噴水には必ず行こう。」


「行きたい。
あそこで夕焼けをみるのね。」


「朝日が昇るのも、乙なものだよ?」


「じゃあ、2回。」


「そうだな、それもいい。」



他には?とせかすと、ジークはまた考え込んだ。



「そう…だな。
俺もまだ行ったことはないけれど、恋人たちに有名な岬がある。」



恋人たちに、有名な。



まだ、ジークは自分たちの関係をはっきりと言葉にしたことはなかった。



それが、今…恋人たち。



それは、そういうふうにとらえてもいいということ?




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