心はいつも、貴方とともに
「いつか、そういう日がくるといいな。」



随分と間をおいてから、ジークは独り言のようにつぶやいた。



見上げると、ジークはどこか遠くをみている。



本当に独り言なのかもしれない。



そう思って、アミリアは何も言わなかった。



窓のない暗い部屋で、ろうそくの光が揺れる。



ジークの柔らかい髪が、その光に舐められて光っていた。



それを何となく見つめながら、アミリアは心を兄へと飛ばす。



元気なんだろうか。



きっと、疲れているに違いない。



寝る間も惜しんでいるのだろう。



ジークは無事だと言っていたけれど、今も大丈夫なんだろうか。



無理をしないでと念じてみる。



笑って大丈夫だと首をふる姿が浮かんだ。



…休めと言っても聞かないのは、わかっている。



結果、身体を壊すのだ。



あぁ、想像しただけで恐ろしい。



突然、ジークが顔を覗き込んできた。



「今、ミアが何を考えているのか、手に取るようにわかるよ。」



くくっと笑われ、アミリアは苦笑した。



「大丈夫、ランバート様は無事戻って来る。」



そう言われると、本当にそうだとなんとか思うことができた。



アミリアは微笑んで、その暗い考えを頭から追い出した。














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