心はいつも、貴方とともに
口ごもっている間、ジークは無言を突き通す。



しかし、痺れを切らしたように大股で近づくと、乱暴にアミリアを抱きしめた。



涙がこぼれそうになり、アミリアは目をきつく閉じる。



しばらくすると、ジークは少しだけアミリアを離した。



そして、ゆっくりとアミリアの髪を梳き、優しく見つめる。



その寂しそうに震える目には、涙が溜まっていた。



眉を微かに震わせながら、ジークはアミリアを見つめ続ける。



どれくらいそうしていたか、アミリアは前々から言おうと決めていた、しかし言えなかった言葉を口にした。



「愛しています。」



それは、ジークが初めて聞く言葉だった。



ジークは濡れた眼を、大きく見開く。



アミリアは驚くジークに微笑んで、そっと頬に手をあてた。



優しく頬を撫でながら、もう一度小さな声で、しかしはっきりと言った。



「私は、貴方を愛しています、ジーク。」



ずっと言いたかった。



ごめんなさい、言わなくて。



でも本当に愛している。



心の底から、愛しているの。



浅い呼吸を繰り返すジークに、アミリアはさらに言った。



「誰がなんと言おうと、私が貴方を愛することは変わらない、変えさせない。
心の底から貴方が愛しい。
だから、それだからこそ、貴方に幸せになってもらいたいの。」


「ミア…。」


「最初からこうなることはわかっていたはずでしょう?
人生で一番幸せな時間を作ることができたのだから、もうこれ以上は望んではいけないのよ。
これからはお互い歩むべき道を、進みましょう。」



ぐっと息を飲んでから、ジークは微笑んだ。



寂しげな、目。



私はどれだけこの人をくるしませているんだろう。



それでも愛してくれる彼に、どうやったら恩返しできるのだろう。



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