心はいつも、貴方とともに
ジークは端まで歩いていき、岸壁に作られた柵に手を置いた。



ここから一緒に景色を楽しんだのは、つい昨日のことのようだ。



でもそれはジークの勝手な記憶錯誤で。



どこからか、子ども達のはしゃぐ声が聞こえてくる。



それを聞いて、あぁこの国も平和になったんだなと頭の隅で考える。



この国を救った彼女は、ジークにとっては悠久の彼方だ。



どれだけ一人で物思いにふけっていたのだろう。



やがてジークはゆっくりと身体を起こし、眼下の景色に背を向けて歩き出した。



今から、育ての親のもとへ、昇進の挨拶にいくのだ。



隊長昇格が決まったときに既に手紙は出してあるが、直接会話は交わしていない。



『ご両親と、きちんと話をしてくださいね。』



真剣な瞳で言った彼女が思い出される。



その約束を守る意味もあり、ジークはやっと帰ることを決心したのだ。



久方ぶりに両親に会うのはやはりどこか気恥ずかしい。



前にアミリアと歩いた、家へと続くでこぼこ道を、今度はジーク一人で進む。



行ってくるよ、ミア。



ジークは心の中で愛しい女性に話しかけて、顔を上げた。













fin.




< 192 / 193 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop