心はいつも、貴方とともに
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散歩ののち、広間に戻ると、そこはちょっとした騒ぎになっていた。
それはそうだ、主役のアミリア姫がどこかへ消えたのだから。
余計なことをした、と焦ったが、騒ぎに気付いたのは姫と別れてからなので謝ることができなかった。
あぁ、もうきっと一生お話する機会はないだろうに。
後味の悪い別れ方だ。
ジークは密かに頭を抱えた。
「ジーク!」
背中から、控え目に声がかかった。
振り返らずとも、声の主が誰だかわかる。
「なんだ?」
「お前、姫を誘拐しやがって。」
「してない。
少し息苦しそうに見えたから、つれだしただけだ。」
「褒めてるんだよ、よくやった!
ほら、見てみろ。
アミリア姫、顔色がだいぶ良くなったぞ。」
言われてみてみるが、よくわからない。
いつも彼女は微笑んでいて、疲れた様子など見せなかった。
真偽のほどは確かめようがないので、ラジャの言葉を信じることにした。
突然、ファンファーレが響き渡った。
「なんだ?」
「あぁ、お前らがいなくなってた間に、隣国の王子が求婚の用意を済ませたんだよ。」