心はいつも、貴方とともに
「どうか、我が妻となっていただきたい。」



端的なプロポーズに、彼女は目を見開く。



会場は、彼女の返事を聞き漏らすまいと静まり返っている。



後ろではランバート王子が心配そうな顔で妹君を見守っている。



ジークは複雑な気持ちだった。



さっきまで自分の隣にいた姫は、申し分ない相手にプロポーズされている。



散歩したことで手の届く存在かもしれないと見た夢は、今や刻々と醒めようとしている。



そうだ、当たり前だ。



自分は平民の出の騎士、彼女は皆に神の子として愛される姫君なのだから。



彼女はイエスと言うだろう。



通常、姫は頬を赤らめて、つつましく求婚を受けるものだ。



しかし、彼女の返事はジークを含めてみんなの意表を突くものだった。



「お断りします。」



静まり返った空間に、その言葉は隅々まで響いたようだった。



さっきまでの沈黙とはまた違う静けさが、広がる。



しばらくして硬直が解けた観客は、口ぐちに言葉を交わし始めた。



檀上ではランバート王子が慌てて姫を腕に抱く。



彼女もまた困惑しているようだった。



「アミリア!」



突然、怒声が響き渡り、会場にはまた静けさが戻った。



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