心はいつも、貴方とともに
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町の酒場は、今日のパーティーの話でもちきりだった。
参加した兵士、忍び込んだビラ配り、貴族から話を聞いてきた侍女や使用人たち。
みんながここへ集まってくる。
ラジャとジークもその一人だった。
ラジャは貴族のくせに、城暮らしで親から離れているのをいいことに、しょっちゅう酒場へ入り浸る。
それに付き合わされるジークもいい加減顔なじみになってきたところだ。
「で、姫は断ったんだろ!?
なんでだろうな?」
「な。
普通なら、そこは相手のキスを受けるはずだぜ?」
キス!?
酒を飲んでいたジークは思わずむせそうになった。
幸い、みんな話に夢中で、からかわれはしなかったが。
「でもまぁ、癒しの姫君がこの国に残ってくれるのはありがたいな。
俺達にとってはあの方はアイドルだからなぁ。」
「そうだな。
…ただ、相手側が怒り狂ってたって話だぞ。」
「あぁ、どうやら姫様に惚れてたみたいだ。」
「なんとしてでも、娶るつもりだとよ。」
ひそひそと交わされる会話に、ジークは耳を澄ませた。
あの王子、姫に惚れてたのか…。
なんだか気分が悪かった。
一度でも彼女と話したことがあるんだろうか?