心はいつも、貴方とともに
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ジークは、自分の耳を疑った。
「今、なんとおっしゃいました?」
失礼を承知で聞き返す。
ランバート王子は、親切にももう一度ゆっくりと言い渡してくれた。
「お前に、妹を護衛してもらいたいんだ。」
「私が、ですか?」
「あぁ。
お前の成績は飛びぬけているし、何より人がいい。
俺の部下の中でも、評判はいいしな。」
それでも、自分が選ばれるなんて…。
「ラジャはいかがでしょう?
あいつなら家柄もいいし、俺みたいな庶民の出よりも…。」
「おいおい、狼狽えすぎだぞ。
お前、いつもの冷静さをどこに落っことした?」
いつも騎士団員と話すときのように、ランバートは口調を崩した。
隣でダニエルが咳払いする。
横目で家臣をちらりと見てから、ランバートは咳払いする。
ジークも慌てて居住まいを正した。
「俺が選んだんだ、何か文句があるか?」
「王子、その口調はあんまりかと。」
「いいんだ、ダニエル。
俺は、アミリアの兄として、忠実なる騎士に頼んでいる。」
「それでは、忠実なる騎士として他の男を推薦します。」
頑ななジークに、ランバートは舌打ちした。