心はいつも、貴方とともに
「遅くまで、精が出るねぇ。」


「これくらいしないと、お前達に追いつけない。」



ありがたくタオルで顔を拭かせてもらう。



ラジャはそんなジークの背中をバンッと叩いた。



「かーっ、嫌味かよそれ。
お前な、俺達はいつお前が俺達を抜いていくかって冷や冷やしてるんだぞ。」


「嘘だね。」


「ホントだよ。
貴族組は小さいころから訓練を受けてるからこれくらいは普通なのにさ。
お前は自力でここまできたんだろ?
なら、その素質を持ってしたら俺達なんか秒読みだよ。」



まったく、とラジャは首を振る。



「23っていう、伸び盛りの身体も手伝って、お前なんか騎士団長抜いちゃうね。」



ジークは慌ててラジャに飛び掛かって口を塞いだ。



「ばっ、お前!
団長に聞かれたらどうするつもりだ…!」



声を潜めて、ラジャを叱る。



しかしラジャは反省の色を見せずに、さらに言いつのった。



「事実だろ、ジーク。
お前、いつか本当にあのハゲワシを抜くって。」


「不謹慎だぞ!」


「不謹慎なもんか、事実だって…。」


「ほう?」



3人目の声が聞こえ、2人はぎょっとして抱き合った恰好のまま動きを止める。



なんだか嫌な予感はしたんだ。



ジークはそっと目を閉じる。



目をつぶっていても、隣のラジャの表情が見えるかのようだ。



そして、夕焼け空に、ラジャの悲鳴が響きわたった。







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