心はいつも、貴方とともに
famine
*
しばらく隊から離れている間に、世の中は大きく動いたらしい。
久し振りに休暇をもらい、城下町に出かけたジークの耳に飛び込んできたのは、不吉な話だった。
「飢饉?」
「あぁ。
なんでも、稲穂を虫が食っていくそうだ。」
「虫…。」
酒屋の主人は、困ったもんだと頭を掻く。
ジークは隣で酒を浴びるように飲んでいるラジャを振り返った。
「どう思う?」
上機嫌なラジャだったが、さすがに国を守る騎士らしく真剣な顔つきになった。
「どうってなぁ…。
害虫はどうしようもない。
ところで、その虫なんだが…。」
ラジャはジークのほうに身体を寄せ、声を落とした。
主人はさりげなく、遠ざかってくれる。
ラジャは喧騒に消えていくような小さな声で言った。
「どうも、敵国がわざとこの国に放したって噂だぜ。」
「なんだって。」
ジークは眉間に深い皺を刻んだ。
「そんなことって、あるのか?」
「わかんねぇぞ。
頭に血が昇ったお坊ちゃんは怖い怖い。」