心はいつも、貴方とともに
再び酒を口に含みながら、ラジャは肩をすくめる。



「セドリック王子、どんな手を使っても姫を手に入れるって息巻いてたからな。」


「どんな手を使ってもって…。」


「現に、刺客が現れやがってんじゃねーかよ既に。」


「確かに。」



ジークは目撃者だ。



まったく、世界はどうなっているんだか。



「とにかく、お前、これから忙しくなりそうだなぁ。」



ほうっと酒臭い息を吐きながら、ラジャは言う。



「どうして?」


「神の子の警護で忙しくなるだろ?」


「あぁ。」


「こうやって酒を飲める機会ももしかしたらそうそうなくなるかもな…。」



ラジャにしては珍しく弱気なことを言う。



ジークは黙って酒を飲んだ。



騒がしい酒屋で、2人は口をつぐんだまま酒を飲み交わした。



黙っていると、頭の中でいろいろなことを考えてしまう。



これからどうなるんだろう、とか。



アミリア姫は、この先どうなるんだろう。



無理やりにでも嫁がされるんだろうか。



いやいや、王子が許さないだろう。



まったく、あの人達も大変だな。



もう一口飲もうとコップを傾けたが空だった。



なんとなくもう一杯頼む気にはなれず、ジークは黙ってラジャが飲み終えるのを待っていた。















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