そのタグを外すのは誰だ!?
 後悔と恐怖で頭がパニックになりそうになったとき、掌をそっと握られた。

「大丈夫? 俺がついてるから、一緒に行こう」

 囁くように小さな声がした。この声は……「千尋くん?」私が恐々と手を握り返しながら聞くと、彼はすぐさま答えた。

「しー。あゆことあゆみに気付かれちゃう。いま彼女らが取り囲んでいるのは英志だからね」

「ゆっくり行こう。手を放さないでね」
「うん。ありがとう……」

 千尋くんの手は分厚く、温かかくて安心できた。なにより、その優しさが私は嬉しかった。

 単純なもので、千尋くんと手を繋ぎ歩いていると、真っ暗な中でたまに気持ち悪いお化けが出てきても不思議と落ち着くことができた。

 ここでもっと怖がったりした方がいいんだろうけども。手を繋いでいるという安心感のためか、まったく怖くなかった。
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