そのタグを外すのは誰だ!?
 視聴覚室に着くとちょうど第一回目の上映会が終わったところだった。

 出てくる人たちを扉の前で待ち、その後順に中に入った。

「この教室って冷房がよく効いてんだよねぇ」みさが安堵した声を出した。

 どうやら彼女はとても暑かったらしい。
 ふと隣にいる千尋くんを見ると彼は、嬉しそうに冷えた机に顔をくっつけてるみさを微笑ましそうに、見ているところだった。

 黒い靄が胸にまた広がるのを感じて、私は慌てて千尋くんから目を逸らした。

 みさが机の一番端に座ったのを見て、その隣にゆっこが座った。そこから順に千尋くん、あゆこ、英志くん、私、あゆみが座り、最後に先輩への挨拶を済ませた備瀬くんが座った。

 教室内は私たち以外に生徒はいなくて、別室にいる備瀬くんの先輩と思われる人が映写機を準備していた。

 火垂るの墓は名作だ。名作なのは分かるが、なぜ今日このメンバーで見なくてはならないのか。

 言い出しっぺの備瀬くんは腕を組み、じっと画面を凝視していたが、あゆことゆっこは両脇から千尋くんの腕を取り、あゆみはしきりに私に特に実のない会話を向けてくる。英志くんとみさはどうやら寝ているらしく、静かに下を向いていた。

 二十分か三十分ぐらいした頃だろうか、突然みさが目を覚まし「行こっか」と言い出した。

 どうやら飽きたらしい。
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