そのタグを外すのは誰だ!?
 ぽつりと残された私たちは、しばし呆然としていた。

「仮病のゆっこ」あゆこがボソリと言った。
「嘘泣きのゆっこ」あゆみが言う。

「ま、総じて嘘つきのゆっこってことでどう?」

 みさがまとめて言うと、あゆみとあゆこから「賛成」と声が上がった。

 英志くんと備瀬くんを連れて、喫茶店を開いている教室に入り軽い昼食をとることにした。

 白いクロスをかけられた机の上には、それぞれ注文した軽食が並べられた。みさがトイレから帰ってきて、私の前に座りさっそくサンドイッチを一つ手に取った。 

「なお、今日ゆっこってさ結構薄いメイクしてたでしょ? 特にいつも気合い入れてるはずのアイメイクがほとんどなかったのは何でだと思う?」

 唐突にみさがサンドイッチを不器用そうに食べながら、私に聞いてきた。

「なんでって……」
 手元のパスタをフォークでくるくるしながら、私は考えた。
 ケバ嬢あゆことかぶるのが嫌だったから? うーんと、うーんとと考えながら、にんまりしているみさを見ると思い当たった。

「あ、まさかさっきの嘘泣きのため?」ぱっと顔を上げると、みさが満足そうに頷いた。

「そう! つまり彼女はこの計画のために、わざとアイメイクを少なくしたわけだ。泣くとくずれてパンダになるからね。何が言いたいか分かるかぃ?」

 ぽとりとみさの手のサンドイッチからキュウリが落ちた。みさはそれを惜しそうに一瞥すると、また私に目をむけた。

「彼女もまた千尋くんのタグを外すために計画を練ってきてたってわけだ。ちなみに私も作戦はあるし、あゆこだってあの通りのお色気ぶりさ。なおは何か練ってきた?」

 あゆみは? と思いながらも、私は残念ながら首を横に振るしかなかった。
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