そのタグを外すのは誰だ!?
「すごいって……何がよ」
 みさが冷静に聞くと、あゆこがまたしてもにやりと笑い答えた。
 どこかでごくりと喉を鳴らす音が聞こえる。

「そりゃぁ、全てが。でもまぁ、長さは期待できないだろうけどさ。聞くところによるとその回復力、速度、何をとってもミラクルらしいよ」
 回復力に速度って、どんなゲームだ。私は心の中で突っ込んだ。ばかばかしい。そんな風に一蹴してやろうかと口を開きかけたとき、私は見てしまった。
 あゆこを中心に黒い暗雲のような霧のようなものが立ち込めているのを。

「み……みんな?」
 濁った空気の中で、あゆこやみさ、ゆっこ、そしてあろうことかあゆみまでも、目に怪しい光を忍ばせている。

「ちょ……ちょっと待って。千尋君の童貞は私がもらうんだからっ」

 意を決して叫んだ。
 そうだ、今の気持ちに嘘はない。彼は昨日私が処女だということを素敵だと言ってくれたじゃないか。私はそんな彼に、私の大事なものをあげたいし、また私は彼の大事なものが欲しい。なにより、みんなの暴動を止められるのは私しかいない。

「な、なおちゃん?」

 気付くとクラス中が私を見ていた。
「あ……」

 朝のホームルームを告げる
チャイムが静かに鳴り響いた。
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