Q.これはセクハラですか?A.いいえ、愛情表現です【BL】
「それにね、俺、内緒ですけど魔法が使えるんですよ」
だから魔法使い役がぴったりなんです、と彼はそう言った。
「魔法?なんだ、誰かを呪いでもするのか?」
頭にろうそく立てて藁人形に釘打ってみたりとか……うわ、想像したら似合わな過ぎて笑えてくる。
「気になります?」
「……いや、別に」
「先生には特別に魔法をかけてあげましょう」
「人の話聞けよ、いらねえよ」
言い返すも、目を閉じて、と言う静かな声に俺は大人しく従った。
「俺しか見えなくなる魔法です」
閉じた瞼の上に、温かい手が被さる。
同じ温度のぬくもりが、唇にも降りてきた。
それがすぐに離れていくと同時に、手も離される。
目を開けるとそこには、悪戯っぽく笑う彼の姿があった。
「俺の事しか考えられなくなるでしょう?」
「お前な……周りの方が気になるに決まってんだろ!」
ここをどこだと思ってやがるんだ。
すぐ近くからは人の声も足音もする。
どう考えても、喧騒にすぐに意識を持っていかれる。
彼の魔法なんて、一瞬で解けてしまう。
「ごめんね、先生」
謝りながら重ねられる手は、さっき顔で感じたよりもあたたかさが無い。
「あ、こんなとこにいた!」
その手を振りほどく間もなく、クラスの生徒が俺たちを見つけ、近づいてくる。