ねむたい、ぬくもり
ねむたい、ぬくもり
「五月ちゃんだってそのつもりで来たんでしょ?」

何度か、啄ばむように首筋にキスしたあと、抵抗するでもなくクスクスと笑う私をもう一度深く抱きしめて、
確認するように瀬戸山さんはそう言葉を続けた。

あたしたちは今、お世辞にも良い趣味とは言えない
絵に描いたようにそれっぽいラブホテルの一室にいる。
初めは何をするわけでもなく、期待に漏れず悪趣味なまっピンクのベッドに座って普通のテレビを見てたんだけど
健全な20代の男女がそれで
「あー楽しかったね」で終わるはずもなく、ていうかそれなら別にラブホじゃなくても良いだろって話で
やっぱりフとした瞬間に、そう、あたしの好みの俳優がCMに出ててあたしがそれを見てギャーギャー言ってるとき。
彼はあたしの唇にそっと口付けた
初めは優しく、そしてしだいに激しく
マニュアル道理の順番で、少しずつあたしに色をつけていく
そしてご丁寧にあたしの意思まで確認した
おお、見事にマニュアル道理。オンナノコは確実にこういうのに弱いんだ
もちろんあたしだってその世間一般のオンナノコの玲に漏れず。
でもそのつもりか、そのつもりじゃないかなんてそんなことはもうすでにあたしにとってはたいした問題じゃなくて
一番重要な問題は
誰かの温もりに触れるってこと
腕の中で、安心して眠りたい
男の人って、セックスしているときが一番優しい
髪の毛を梳く動作、優しくキスする唇、抱きしめてくれる広い胸
語れるほど、経験なんてないけど只一人の例外を除いては皆そうだ
その行為自体ははっきり言って好きじゃないんだけど、
今のあたしにとっては唯一確実に温もりを得られる場所なのかもしれない
だからってもちろん、知らない男を捕まえてベッドイン、とかいうわけではなく
男の人とそういう雰囲気になったときにはっきり断れない
彼女がいようが、奥さんがいようが
一時の欲求を紛らわすために、あたしに優しくしてくれる人にたいして
ひょっとしたらこの人があたしに安心して眠れる温もりをくれるかもしれない
なんていらない幻想を抱いて
大抵、とういうよりは今までズルズルそうなっちゃったときは絶対にあとで後悔する
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