ねむたい、ぬくもり
「言っとくけど」


しばらくたって、男が突然に切り出す。

「俺、インポとかじゃねーからな!」

あたしは思わず、吹き出した。
クスクス、とこみ上げる笑いをこらえようともせずに笑っていると
男はすねたように、笑ってんじゃねーよと呟いた。

「ごめんごめん。」


不思議と、とげとげしていた気持ちが
丸みをおびていく感じがした。
暖かさに、溶けていく感じ。

「・・・おまえはさ、なんで俺なんかについてきたの?」


男は、あたしを抱きしめたまま
そう語尾をあげる。


「うーん。なんでだろ」


わからないけど、あのどこか寂しそうな目につかまった。
似てる、と思ったのかもしれない。
この人も、寂しいのかも
そう思ったのかもしれない。


「じゃぁ、何であたしを誘ったの?やるためじゃないの?」


男は、一瞬、黙った。
そして、あたしを抱きしめる腕に力を込めた。


「・・・誰かとこうして、眠りたかった。」



消えそうな声だった。

あたしは、その瞬間にどうしようもなく切なくなって
あたしを抱きしめた手をほどいて
その金色の頭をゆっくりと抱いた。




あったけー、と男が呟いて
そのまま、あたしたちは目を閉じた。




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