大地くんの天気予報


「うん…。春ってさ、桜ばっかり目立って、桜一色って感じじゃん。世間も、景色も…。梅雨になりゃあ、アジサイだし、そんで夏にはヒマワリだろ。…藤の花ってさ、春と夏の間の中途半端な短い時期に、地味に儚く咲いてるイメージがあるんだよな…」


「……」


「…決してマイナーな花ってわけじゃあないんだけど…、なんかこう、意識して見ないと目に止まらないっていうか、つい見逃しちまうっていうか…」


「…そう言われると、そうかもね…」


「…その控え目な感じが、なんとなく好感持てるっていうか…、不思議と、見てて癒されるんだよな…」




藤棚を見上げる大地の目は、やさしかった。


清風くんを、見ている時みたいだった…。


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