各駅停車 ~あなたに会いたくて~【短編】
「あのキーホルダー・・・、大切な物だって言ったよね?」

あたしは列車の振動に合わせて、カバンで揺れている、あのキーホルダーを見つめて言った。



「うん。」

涼は答えた。


「あれは、小さい頃におじいちゃんと一緒に水族館で、イルカのショーを見たときに、おじいちゃんが買ってくれた物なんだ。」



「そうなの・・・。」



「おじいちゃんは、今はもういない。三年前に亡くなった。だからこれは、ぼくにとっては、おじいちゃんの形見みたいな物なんだ。

あの時、失くすところだったけど、きみが拾って、届けてくれたから、嬉しかった。」


涼はそっと微笑んだ。


あたしの胸をときめかせる彼の微笑み・・・。



「そんな大切な物だったのね・・・。」



あたしは再び、涼のキーホルダーを見つめた。


涼にとっては、とても大切な物・・・。


あたしたちを近付けてくれた素敵なキーホルダー・・・。





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