幻獣のタペストリー ~落ちこぼれ魔導士の召喚魔法~
「古い時代はには、『五月祭の女王』とは女神の寄坐(よりまし)で、一番美しい乙女が一人だけ選ばれたそうだ」


「へえ」


「で、多産と豊穣を願ってその地の王と一夜をともにしたとも、神々への生贄として焼かれたとも伝えられるな」


「げーっ! 今の時代でよかった」


ホークは声を立てて笑った。


「どんな魔法でも天候は左右できぬからな。作物の収穫に関しては神頼みになるのは仕方あるまい?」


「今年は天候に恵まれるといいね」

あたしは、村の向こうに広がる広大な畑と牧草地に目をやりながら言った。

あと数週間もすれば、どこも緑に満ち溢れるだろう。


「そうだな」

ホークは、頷いてそう答えた。


あたしは、この村が好きだ。


どこまでも続く豊かな風景。

穏やかで優しい人達。

大切な友達。

そして――

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