幻獣のタペストリー ~落ちこぼれ魔導士の召喚魔法~
戦う女神

 1

村はずれの家のルーは、書き置きを残して家出をしたという。

まだ十三歳。

確かに、のんびりとした村の生活が嫌になる年頃には違いない。

でもルーが、幼い弟や妹を置いて王都に運試しに行くようなタイプとも、あたしには思えなかった。


ホークも、何か違和感を持ったようだったけれど、家族が騒ぎ立てている訳ではないので、それ以上どうする事もできなかった。


「一応、エリザには手紙を出しておいた」

と、ホークはあたしに言った。


そうか、お姉ちゃんなら、ルーとは顔見知りだ。

どこかで偶然出会う事があればいいんだけど。



それぞれがルーを心配しながら、アルス村は五月祭を迎えた。


祭は四月末日の日没から始まる。


五月祭はお祭りというより、儀式の意味合いが強い。

祭の前夜にはあらゆる場所で篝火が燈される。

――村の辻々で、農地の真ん中で、森へと続く丘の上で

炎は冬を追いやる太陽を意味しているという。

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