幻獣のタペストリー ~落ちこぼれ魔導士の召喚魔法~
「こういうドレスに見合うような女性にならなくてはね」

母が言う。


何だか二人とも、急にあたしを大人にしようとしているみたい。


いつもは三つ編にしている髪も、今日ばかりは解いて下ろし、花輪を模った銀製のサークレットを頭につけられた。


大きな鏡の前に立って、自分の姿を見た。

鏡の向こうの自分が、自分ではないように思える。


変なの。


「こんなの全然あたしらしくない」


戸惑うように呟くと、鏡の中で困ったような表情の母と目が合った。


「お友達が婚約したのですもの、あなたも少し大人びた格好をしては?」

先代伯爵夫人が言った。

さすがはホークの母上、容赦がないところはそっくりだ。


あたしは諦めて、もう一度鏡を見た。

バカみたいに見えないよね?



いつもと違うあたしを見ても、伯爵家の使用人達はただ微笑むだけだった。

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