幻獣のタペストリー ~落ちこぼれ魔導士の召喚魔法~
「真に悪いのは、本物のヒュドラを、あんな邪悪な蛇を作り出した者だ」

「誰かが故意にやったと思ってるの?」

「本物のヒュドラは駆除に駆除を重ね、人が絶滅させた生き物だ。ただ、卵だけは硬すぎて破壊できなかった。ヒュドラの卵が人間の腹の中で孵るのは知っているな?」

「うん」


大蛇に寄生された人間は、ひたすら有毒の植物や動物を求める。

やがて大きく育ったヒュドラは、寄生した人間の内臓を食い尽くし、脱皮するように人間の皮を脱ぎ捨てる。


「誰かがその卵を、ルーの祖母に飲み込ませた。偶然に口に入るような代物ではない」

「ルーの血は毒を含んでた」

「ああ。食事に少しずつ毒が混ぜられていたようだな。ルーが落ち着いたら、聞き出せるだろう」


ホークは親指であたしの涙を拭った。


「誰であろうと、必ず犯人を突き止める。ローズマリーにも出来うる限りの治療を受けさせる。だからもう自分を責めるな」


「うん」

あたしはホークの首に抱き着いた。

「ありがとう、ホーク」

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