幻獣のタペストリー ~落ちこぼれ魔導士の召喚魔法~
――自分が召喚した幻獣を相手に愚痴る魔導士なんて、嬢ちゃんくらいだぜ

ジャルグは冷やかすように言った。

――理想の自分になんて、そうそうなれるもんじゃねぇ。だいたい、理想の自分になれたら、そこで終わりじゃねぇか。理想の自分に近づくために日々を送る方が、ずっといいって


あたしは寝返りをうって俯せになり、頬杖をついた。


「ジャルグって哲学者だね」


――長生きだからな


「ジャルグのいる世界って、どんな?」


――別に変わらねぇぜ。犬や猫の代わりにオイラ達がいるってだけでさ


「人間もいる?」


――ああ。ただ、全員魔法が使えるんだ


その人達もあたしみたいに、悩んだり迷ったりするのかな……


あたしは、昨夜のホークとのやり取りを思い返した。


もうすぐ奥方を貰うくせに、あたしの恋人になりたいって――どういう事?

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