幻獣のタペストリー ~落ちこぼれ魔導士の召喚魔法~

 3

「海より生まれし波の馬……っと」


あたしはブツブツ呟きながら杼(ひ)を滑らせた。


青系の色と白糸を使ってあたしが織っているのは、波打際で前脚を上げている白馬のタペストリーだ。

背後の巨岩には、黒い<扉>も織り込んだ。


自分の家に戻って三週間たった。


ローズマリーは起きて歩けるほどに回復した。

と言っても、視界はかなりぼやけているらしく、日が暮れると使い物にならないと笑って言う。

あの綺麗な青い瞳の輝きが失われているのを見るのは、あたしにとってはとても辛い。

きっとショーンにとっても。


家に戻ってから、ホークには会っていない。


先代伯爵夫人の誘いも、何だかんだと理由をつけて断り続けている。


ただ、二週間前に一度だけ、ホークがあたしを訪ねて来た。

あたしはちょうどこのタペストリーを織っていた時で、自分の部屋にいた。


小さなノックの後に、ホークの声がドアの向こうから聞こえた。

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