幻獣のタペストリー ~落ちこぼれ魔導士の召喚魔法~
あたしは、久しぶりに伯爵家を訪れた。


「まあ、サンディお嬢様!」

ミリーは大袈裟な仕草であたしを抱きしめた。


「ホークはいる?」

あたしは廊下を歩きながら聞いた。


「伯爵様なら執務室に」


「じゃあ、先に奥様にご挨拶するわ」


すると、奥の部屋の入口から、先代伯爵夫人が顔を出した。


「わたくしなど放っておいて、イアンとさっさと仲直りしてちょうだい。家中が辛気臭くてたまらないわ」


「では、お言葉に甘えて」


「先にお取り次ぎしましょうか?」

ミリーが心配そうに言う。


「サンディなら大丈夫です」

先代伯爵夫人があたしの代わりに答えた。

「イアンのご機嫌取りなんて、生まれた時からやっているのですから」


あたしは笑いながら、先代伯爵夫人に膝を曲げて礼をすると、二階への階段を駆け上がった。

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