幻獣のタペストリー ~落ちこぼれ魔導士の召喚魔法~
執務室の扉は、来る人を拒むように大きく重々しかった。


音高く三度叩くと、中から『誰だ?』と声がした。

ノブを回すと鍵はかかっていなかったので、あたしは勝手にドアを開けて中に入った。


「こんにちは、ホーク」


ホークはペンを置くと、落ち着いた仕草でどっしりとした机の上に両肘をつき、指を組んだ。


「やあ、アレクサンドラ。わたしの事は、亡き者にしたのだと思っていたが?」


「そう? あたしはそっちこそ、あたしを見限ったんだと思っていたのに」


「会いたくないと思われているのに、何度も訪ねる者はおるまい?」


「まあ、そうね」

あたしは肩をすくめた。

「だから会いに来たわ」


「わたしに何を言えと?」


「別に。何も」


ただ、旅立つ前に顔を見ておきたかっただけ。

できれば仲直りをしたかったけれど、しょうがないか……

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