幻獣のタペストリー ~落ちこぼれ魔導士の召喚魔法~
あたしが勝手に旅立っても、ホークは傷つきはしないだろう。

カンカンに怒るかもしれないけれど。

ホークを嫌って家出をしたとだけは思われたくない。


あたしは机の端に腰掛けて、以前と変わらないように他愛もない話をした。


「魔法修業はもうちょっと待って」

そうね……あたしが帰って来るまで。


「では、当分村の大工は暇だな。何か別の仕事を与えなければ」


あたしは笑ってホークの肩を小突いた。


「さてと、すっかり仕事の邪魔をしちゃった。もう行くね」


「アレクサンドラ」

執務室を出て行きかけたあたしを、ホークが呼び止めた。


「何?」

「また来い」


あたしは答えずに、片手を振って部屋を出て、閉じたドアにもたれ掛かった。


いつかまたね、ホーク。






< 181 / 289 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop