幻獣のタペストリー ~落ちこぼれ魔導士の召喚魔法~

 4

夜の静寂(しじま)を掻き分けるように、蹄の音と水音が聞こえた。


星明かりの下に現れたのは、大きな白馬だ。

一歩進む毎に、その足元からは水飛沫(みずしぶき)があがっている。

春の野に不釣り合いな海の香りが、あたしの鼻をくすぐった。


「エーンバル」


あたしは両手を差し延べた。

白馬はあたしの前まで来ると、頭を下げた。


――随分と上達したじゃねぇか


あたしの肩の上でジャルグが言った。


「ありがとう。だけどこの子、馬具を着けさせてくれるかな……」


――おいおい

ジャルグは笑いを堪えたような奇妙な声で言った。

――こいつは幻獣だぜ。普通の馬具なんて沽券に関わるぞ


エーンバルがあたしの目の前で、嘲笑うように歯を剥き出しにした。


――こいつの首に触れろってさ

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