幻獣のタペストリー ~落ちこぼれ魔導士の召喚魔法~
ジャルグに言われるままに、白馬の首の横に触れた。

指先から青い光が、エーンバルの体を走るように広がった。

光の後に、奇妙な形の青い鞍が現れた。

鞍の前側には、取っ手のような物がついている。


「手綱は?」


――乗り手が行きたい所に連れて行くんだ。手綱なんていらねぇとさ。落っこちそうになったら、その取っ手に掴まってろ


「ふうん」


あたしは鞍の後ろにささやかな手荷物を括りつけ、取っ手を掴んでエーンバルの背に飛び乗った。


「アルス村へ。音がしないようにゆっくりでいいわ」


あたしは夜の村を静かに通り抜けた。

家々の灯はすっかり消えて、静まり返っていた。

どこもかしこも、幼い頃からの思い出に満ちている。

鍛冶屋の前を通り掛かった時、あたしの胸が詰まった。

初めてローズマリーに会ったのは、ホークに付きまとって村に連れて来てもらった時だった。

恥ずかしくてホークの後ろに隠れたあたしの手を引っ張ると、ローズマリーは

『ねえ、あたしのお人形見たいでしょ』

そう言ってニッコリと笑った。


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