幻獣のタペストリー ~落ちこぼれ魔導士の召喚魔法~
そろそろエーンバルを帰さなければ。

遠くに集落らしき屋根が見える。

教会があるといいんだけど。


その日は、持って来たパンと水で食事を終えた。

昼間は小さな教会で、礼拝しているふりをして休み、日が沈んむとすぐ、エーンバルを召喚した。

夜中走り続け、マール修道院に着いたのは真夜中を過ぎたあたりだった。


「ジャルグ、修道院ってあれ?」

あたしは、満月の明かりの下で、海の上にそそり立つような島を指差した。

「まるで、城塞だわ」

マール修道院は想像していたような長閑な島の質素な建物ではなく、絶壁の上に建つ砦のような場所だった。


――元々、城塞だからな

ジャルグが言った。

――ラドリーン姫を幽閉するための場所だった。誰も近づけないように、中では魔法を使えないように造られた


「待って! じゃあ、あそこではジャルグを召喚できないの?」


――心配すんな。今は使える。さあ、行くぞ


あたしは頷き、エーンバルに進むように言った。

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