幻獣のタペストリー ~落ちこぼれ魔導士の召喚魔法~
思ったよりも大きな音がしてひやりとした。

あたりを伺いながら隙間から中に滑り込み、あたしはホッと吐息をついた。


「そこのあなた! お待ちなさい!」


後ろから咎める声がして、あたしは飛び上がりそうになった。


もう見つかったの?


自分のドジさ加減に呆れながら恐る恐る振り返ると、中年の修道女と、どう見ても世俗的な普通のドレスを着た少女が立っていた。


「こ……こんばんは」


ああ、どうやってごまかそう?


「ホームシックになるのは分かるけれど、一人で帰るのは無理ですよ」

尼僧は諭すようにあたしに言った。

「第一、夜の海を舟もなしに渡れるはずがないでしょう?」


はい??


「一年か二年したら、お家に呼び戻されます。それまでの辛抱です。さ、二人ともいらっしゃい。部屋に戻りますよ」


どうやら、少女は修道院に入れられて、逃げようとしたところを見つけられたらしい。

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