幻獣のタペストリー ~落ちこぼれ魔導士の召喚魔法~
幻獣のタペストリ-

 1

いまだかつて、こんなにウンザリとした事はなかった。



朝になって起きると、同じ部屋に三人の女の子が眠っていた。

もう太陽は昇っているのに、三人とも起きる気配がない。

今のうちに姿を消すべきか、それともこの子達の『お仲間』として振る舞う方が利口だろうか……

悩みながらベッドを整えていると、ドアが開いて修道女が一人、ツカツカと入って来た。

昨夜会った尼僧とは別人だ。

手には板のような物を持っている。


「おはよう。早起きね」

尼僧はそう言うと、板に目を落とした。

「えーと、あなたの名前は?」


「アレクサンドラです」

あたしは正式な名前を名乗った。

修道院に来るような娘は、絶対に『サンディ』なんて名前なわけがない。


「アレクサンドラ……? 名前がないわね。シスター·アンナったら、何をやってるのかしら。ごめんなさい。お家の事をもう一度聞かせてくれる? お父上のお名前は?」


「ロイ·マスタフ。もう亡くなりましたが」

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