幻獣のタペストリー ~落ちこぼれ魔導士の召喚魔法~
だいたい、こんなあたしが自分から修道院に行きたがる訳ないじゃない。


ホークのバカ。

でも、心配してるかなぁ?


ちょっとだけ感傷的な気分になった途端に、横に座っていたウイローミアが鼻をすすった。


「お……お母様ぁ」


するとウイローミアの向こうに座っているロザリンドが、『泣かないで』と慰めた。


「寂しいでしょうけど、貴女はまだいいわ。わたしなんて――」


そこから延々と続く『わたしなんて』の不幸なエピソードの数々!

今ホークが迎えに来たら、絶対に抱き着いて帰るわ。


「神よ、あたしに忍耐力をお与え下さい」

あたしは天井を見上げて呟いた。

「ついでに、朝食も」


けれど祈りが聞き届けられる事はなく、長い礼拝の後、あたし達は再び引率の尼僧に連れられて長い回廊を歩いた。

しばらく歩いて行くと、広いホールに出た。

ホールには出入口が三つあり、一つは今あたし達が通って来たもの。

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