幻獣のタペストリー ~落ちこぼれ魔導士の召喚魔法~
「院長様への目通りが済みましたら、改めてご機嫌を伺いに参上いたしますので」

引率の尼僧はそう言うと、あたしの腕を抱え込んだ。


うわぁ……せめて召喚呪文を書き写させて!


願い空しく、あたしは引きずられるように連れて行かれたのだった。




「胆を冷やしましたわ」

修道院長の部屋で、あたしは引率の尼僧にしっかりと注意された。

ウイローミアは、自分が叱られた訳でもないのに涙ぐんでる。


「瑠璃宮は王妃様の御座所です。勝手に入ってはなりませんよ」

マール修道院の院長は、穏やかな話し方の人だった。

外見だけ見ると、干からびた魚のようだけれど。


「はぁ……」

よく分からなくて、あたしが間の抜けた返事をすると、院長は微笑んだ。


「田舎育ちだと言いましたね? 王妃様の事を聞いた事がないのかしら?」


「はい」

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