幻獣のタペストリー ~落ちこぼれ魔導士の召喚魔法~
ホークからは王の事しか聞いていない。


「王妃様は隣国の王女で、四年前から瑠璃宮で暮らしていらっしゃいます。内乱で御身(おんみ)に危害が及ぶ恐れがあるためです――表向きは」

院長はあたしの目を真っ直ぐに見た。

「どういう意味か分かりますね?」


あたしは頷いた。


隣国から嫁いで来た王女様は、王妃とは名ばかりの人質で、修道院に幽閉されているという意味だ。

それくらいなら、あたしにも分かる。


「よろしい。では朝餉(あさげ)の用意を」

院長が傍らに立っていた尼僧に言い付けた。


間もなく院長室に、あたし達の分も含めた食事が用意された。

薄く切った固いパンと野菜のスープだけだったけれど、すきっ腹には十分過ぎるほどのご馳走だった。


途中で、食事を運んできた尼僧が院長の耳元に何か囁いた。

院長は大きく頷いて、あたしの方を見た。


何だろう?


勝手に潜り込んでいる、という思いがあるせいか、ついドキドキしてしまう。

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