幻獣のタペストリー ~落ちこぼれ魔導士の召喚魔法~
ホークは『可愛らしいお弟子さん』に関しては完全に無視を決め込んだ。

「王都で何事かあったか?」

「貴方に会いたくて我慢できなかったの」

レディ·クリスタルの思わせぶりな言葉もホークは無視する。

「貴女が王都を離れてこんな田舎まで遊びに来るはずがなかろう? 先に我が家に行って旅仕度を解くといい。母に伝令を送っておく」


微かに空気がうねるような感覚が、あたしの耳の横でした。

羽音と共に小ぶりの隼が屋敷を目指して飛んで行く。


「魔法陣も呪文もなし――さすがは『賢者ホーク』ね」

レディ·クリスタルが感心したように言った。


「行きたまえ。わたしはこの娘(こ)を家に送り届けてくる」

ホークが馬に拍車をかけた。

あたしの体は少し揺らいだけれど、ホークの腕に支えられてすぐに体勢を立て直した。

あたしは、魔術は下手くそでも乗馬は得意だ。

鞍を置かなくても乗れる。

乗馬もホークが教えてくれた。

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